鉄道

 「まだコドモでいたいのね」

なんて言われた。

 わからない と思う。どうしたいのか、なんでそう思うのか、逆に何も思わないのか、思いたくないのか、わからないと思う。なんだかよくわからないけどふわふわした(けれど特に浮かれもしない形のないもの)をぶら下げて、何かを探そうとしているんだと思う。いや、探そうともしていないのかな。どうなんだろう

 「好きだ」

なんて言われた。前々から好かれていたことにはちょこっと気がついていた。……ような気がする。でも、どうなんだろう。私が「はい」と言っても「いいえ」と言っても、なんか違うような気がする。

 わからない、なんなんだろう、気がする、どうしたら、難しい、できない、なんだか。もやもや。

 「はい」と言ってしまえば「はい」だし「いいえ」と言ってしまえば「いいえ」なんだと思う。誰か「はい」の枠を、「いいえ」の枠を作ってくれたらいいのになあ。でも、それって誰かにとっての「はい」で誰かにとっての「いいえ」なんだろうなあ。私にとっての「はい」と私にとっての「いいえ」ってなんだろうな。

 いや、「はい」と言うのも「いいえ」と言うのも「違う」んじゃなくて、だけど「正解」でもなくて、どっちでもないような。どっちでもありたいような。かといって別の答えを見つけようとしても、「コドモ」の私にとってそんなことはハードルが高すぎるんだと思う。

 「わからない」

と言ってしまった。「わからない」に変わる言葉を知らなかった。だって「わからない」んだもん。わからないから、わからないんだもん。あのときの(今の)私にとって「わからない」がベストなんだもん。いいや、わからなくったって。いつかわかるときが来るよ……って思えないな。なんでだろう。

 この「わからない」を放っておいていいのかなあ。「わからない」を「わからない」にしたまんまでいいのかなあ。小平はどんな顔してたっけ。

 ほんとにわからないだけなのかなあ。もしかして、わかりたくないのかなあ。わかっちゃったら、わかってしまったら……答えを出さなきゃいけなくなっちゃうもん。

 なんで私に答えを委ねるようなことしたんだろう。なんで私が決めなきゃいけないんだろう。なんならいっそのこと、先に言っておけば……あれ、誰に何を言うんだろう。え……

 私が困りたくないから。私がこんなに悩まなくていいようにしたいから。私が。小平が。……小平が困っちゃうから。私のわからないを、わからないままにしていて悲しいのは小平……なのかもしれない。ごめんね。こんなどっちつかずな「コドモ」でごめんね。お子ちゃまでごめんね。ごめんね。

 

 お風呂上がりの鏡って、なんでこんなに見えないんだろう。